スヴェル

スヴェル(Svalinn) ザマゼンタ

「我が名はガラルを護りし盾の王!この地を脅かす者に、容赦はしない」
「巨大化が起きる巣穴には、ブラックナイトの持つねがいぼしの粒子が多量に発生している可能性がある。ならば、我等が赴くのも必然であろう?」
「はははっ!このような事、昔なら考えられなかったな!楽しくて仕方がない!」

いじっぱり(あばれるのがすき)
年齢 / 不明
身長 / 195㎝
一人称 / 我
他称 / お前、貴公、そなた 他

遠い昔、黒い夜を退けた獣の王の一人。
その盾は絶対の護りであり、一薙ぎすれば全てをはじき飛ばす剣にもなる、勇猛なる騎士王。
永い眠りについた後、幾星霜の時を経て、まどろみの森でひっそりと地方を見守っていたが、ある日森に迷い込んできた羊の子を迎えに行った際、同じく羊の子を探しに来たニンゲンと共にいたメドラッドと遭遇する。
その時は自身の能力である特殊な霧で幻惑を見せると共に姿を晦ますが、後に黒い夜の封印が解けると同時に覚醒し、”錆びた盾”を手にしたメドラッド一行の呼び声に応え、彼らの前に姿を見せた。
そして、もう一人の王アルベリヒと共に今度こそ黒い夜を退けた。

不死の存在であり、致命傷であろうとも永い眠りにつくことで再生する身体を持つ。
まどろみの森は、二人の王が眠りながらでも、夢を見るように地方を見守る為の場所であり、結界によって隔絶された、王の聖域とも呼べる。
逆に言えば、彼らは何があろうとも、ガラルの地を離れることはできない。

*****

軽快な性格で少しひょうきんな、大概の事は大口をあけて笑い飛ばすような男。
大雑把に見えて、先の先まで見据えた行動をし、厳しいようでたまに甘い、おおらかな王。
基本的には物事は楽しくあるべき、という思考の持ち主で、常に最良かつ、”自らが好ましいと感じる方”を選択する。
但しガラル地方の危機に関してはその限りではなく、その行動原理には常に第一にガラル地方が置かれている──のだが。
その昔、黒い夜に対して、溢れる災厄が本人の意志によるものではないと知るや否や、命を奪うのではなく、最も苦しまず無力化できる方法として、封印という手段を選んだこともある情の深い騎士でもある。
王として地方を愛し、そこに住まう民の平穏を護る事を己が使命としているが、それと崇められるのは好かないようで、現在同行している者達にもフランクに接するようにと無茶ぶりをする。

数千年ぶりに目覚めた現在では、すんなり現代のガラルに適応し、王としての役目を果たしながら、素性を隠してヒトの世界に紛れ込んでいることも。
カフェ巡りがお気に召したようで、紅茶に甘味とあれこれ楽しんでいるご様子。
今の主人を新たな王と認めてから、なかなかにご機嫌(オブラート)な日々を過ごしているが、楽しいので別段気にしてはおらず、それどころかいつか訪れる終わりを寂しがってもいる。

スヴェルという名は、過去に名を求められた際、スヴェル自身で自らを定義した名前。
ニンゲンの文献から適当に選び取ったもので、盾を意味する言葉。

余談であるが男の姿を主としているが、性別の概念を持たない関係上、女の姿を取ることも可能。

(これは、遠い昔の話、)

二人の王は、ニンゲンの王と手を取り合い、互いの領域を守護してきた。
従えるは緑、赤、青の騎士。彼らは先祖代々、死を知らぬ王へと仕えてきた。
その代に仕えていた者たちの名をモルドレッド、ユーウェイン、トリスタンという。

あるとき、突如何かが地方の空を真っ黒に覆った。
二人の王はニンゲンの王と手を取り合い、激しい戦いの末に黒き夜を封印した。望まぬ力をふるい続けることの無いよう、深く眠れと、何人も見つけられない場所へと封じ込めた。
代償は大きく、王達も回復の為、かつてないほどの永い眠りに就くことを余儀なくされた。
そして王は騎士達に告げた。「我らはこれから途方もない時を眠る。別れの時だ、誇り高き騎士たちよ。貴殿ら一族はその時まで、我らの事を忘れ、自らの為に生きるのだ」と。
騎士たちに忘却のまじないをかけ、同時に、ニンゲン達の記録からも獣の王の存在を消し去った。
そして、二人の王は眠った。その傷が癒える時まで、民の強さを信じて。

その昔、彼は冷酷な王だった。

剣と盾の王とは、
寿命を持たない存在なため、繁殖の必要がなく、他者に対して博愛以上の感情を持たない。
主体性はあるが欲が薄く、長い年月を生きる中で多少なりとも生物らしい感情は備わっているものの、基本的には守護の為だけに生まれ落ちた存在であり、生きた守護機関である。
盾の王スヴェルもまた、今のような気さくさは欠片もなく、自らが治める土地を護る以外の事に関心を示さなかった。

そんな生きた機関に、心で以て接する一人の騎士がいた。
名を騎士モルドレッド。緑の力を持つ、勇敢で、目に入るもの全てを守ろうとする心優しき──茶目っ気のある男である。
底冷えするような冷たい眼差しを物ともせず、その騎士は盾の王に難なく寄ってきて、たくさんの話をした。

貴方と剣王の尽力のお陰で、いかにこの地方が素晴らしい物であふれているか。
機関であろうとも、貴方にもそんな素晴らしい物をたくさん知って欲しいと。
そんな生き方じゃ、つまらないですよ、と。

全く反応を示さない王を気にすることなくモルドレッドはよく喋り、頼んでもいないのに自身の好むものを共有した。
ただ脅威を根絶するためだけに、地方を巡る王に、たくさんの物を教えた。「知っている」と一蹴されようとも、「でも全てではないでしょう?」と示して見せた。
それは全て、これまで盾の王が自身には必要ないと認知してこなかったものだった。

騎士モルドレッドは周囲が呆れるほどに、剣王が彼の身を案じて忠告しようとも、”機関”に語り掛け続けるのを止めなかった。
ある日、無言を貫いていた盾の王は言う。
「貴公は、阿呆なのか」
騎士は目をしばたく。阿呆と言われた事にではなく、初めて、なんでもない時に王が口を開いたからだ。
「………ええ、阿呆ですよ、俺は。阿呆なので、王が話をしてくれて今、とても嬉しいです」

その日から、王は度々騎士の言葉に反応を返すようになった。必要ないとしたものに、目を向けるようになった。
剣王が何をしたと緑の騎士に詰め寄るほどに、機関であった盾の王は、次第に感情を持つ生き物になった。
そして、盾の王は、初めて、脅威に対しても”排除”以外の感情を向け、その選択をした為に、平和と引き換えに多大なダメージを負い、その身を癒すために眠りへとつく事になる。
容易く騎士の寿命など越えるほどの、永い眠りへと。

「二度と、相まみえることはなかろう。モルドレッド。お前は、騎士の任など忘れ、お前の思うがままに。天命を全うしなさい」

感情を知った王は、騎士がその命尽きるまで使命を全うするだろう事を見据え、その記憶を奪った。
その心のままに、自らを生き物にしてくれた優しい騎士に自由に生きて欲しいという願いから、まじないを遺した。

その騎士の魂と、数千年の時を経て再会することになろうとは、つゆ知らず。

*****

錆びた盾に呼ばれた先で、メドラッドと名乗る男がいた。
仲間を守りたいから力を貸せというその視線が、妙に懐かしかった。
その魂を感じたとき、似ても似つかぬくせに、たまによく似ている仕草をする様子にどうしようもない感情が込み上げた。
それは大事な相手への挙動であったり、自身を叱るときの仕草であったり。
自分を王と呼びながら若干不遜な態度を取るメドラッドに対し、スヴェルという一人の生き物は、遠い過去に思いをはせつつ、眩しそうにその背を見つめる。
ああ、全く。生まれ変わってもお前は変わらないのだな……と

現代で出会った者達について

メドラッド:メドラッド
過去に自身に心を宿した存在の生まれ変わりにあたる。
スヴェル自身は、モルドレッドとメドラッドを、似てはいるが別の人として見ている。
最初に出会ったときは、単なるヒトの子だとして姿を晦ましたが、次に呼ばれた時、その魂が騎士のものである事に気付いた。
基本的にはメドラッドが盾パ一行と家族のように過ごす姿を一歩下がって見守っており、現代での使命の遂行の為に協力を仰いでいる。
その対価として、スヴェルは自身が微睡みのなかで見てきた歴史を話してやる、といった具合。話を楽しそうに聞くメドラッドを見るのが好き。
現代では対等な関係であり、そうであれと促すものの、メドラッドからすれば一族全体で仕えている王なため、主従のような関係が続いている。
自身に無頓着なスヴェルを、メドラッドがついつい構ってしまい、その度にスヴェルが機嫌良さそうに笑うのでメドラッドが困惑することもしばしば。
スヴェルにその自覚はないが、メドラッドと過ごす時間を愛おしいと感じている。

イヴァン:イヴァン
騎士ユーウェインの子孫に当たり、イヴァンがユーウェインに似た部分を持つためか、彼の扱いが上手い。
イヴァンの持つ人脈を頼りにしており、彼に多くの調査を依頼している。
文句を言いつつも自分を「王」と呼んで協力してくれる姿を気に入っており、ついついからかいがち。

トリストラム:トリストラム
騎士トリスタンの子孫にあたり、彼は公私の切り替えが得意だったので、嘘が付けない性格であることに驚いた。
トリスタンに比べると転がしやすすぎる性格を心配しているが、その度に放っておけと怒られている。そういう不遜なところが気に入っているとは言ってやらない意地の悪さ。
たまに睨まれているが、それが「兄貴分をとったから」と気付けるのはもう少し先。

アルベリヒ:アル
片割れの剣の王。
(アルベリヒの設定追加後に追記)

ネヴァヴィス:ネヴィ
黒い夜の子。
(設定追加後に追記)